2021/09/19 15:20
人はいつも、悩みや問題を抱えている。人間関係や仕事のことで、トラブルが絶えない。友人との関係もスムーズに進まない。なぜだろう? 毎日、私たちは大小さまざまなハードルに直面する。その対応の仕方に何か問題があるから、結果として悩み苦しみが生まれ、トラブルが起きるのだ。人生とは「失敗するのは当たり前」というべき戦いなのに、1つや2つの失敗を認められず、引き摺ってしまう。失敗と、それに伴った落ち込みの感情を際限なく頭の中で再生し続ければ、精神病にもなる。そこまで悪化せずとも、誰でも精神的な悩みを抱えている。失敗への対応が間違っているからだ。
たとえば大規模な災害や事故に遭遇すると、強い精神的ショックを受ける。災害や事故はどうにもならないハードルだと理解し、納得しなくてはならないのに、それができないから。普段は、いったん起きてしまった災害は乗り越えられないと誰もが理解しているのに、我が身に降りかかった瞬間に、その理解は吹き飛んでしまう。両親や子供が不慮の事故で死んだら、耐えられない悲しみが襲うだろう。実存の問題にぶつかったのだ。
しかし、途方に暮れて落ち込んでも解決しない。対応方法はシンプル。「では、どうする?」「この問題に、どう対処したらいい?」と自分に聞くだけ。答えはすぐに出る。「何もできない。死者は生き返らない」。とても失礼に感じるが、これが真実の答え。
だから、普段から訓練して準備しなくてはいけない。大きな問題に直面したときに慌てて解決策を自問しても、何も出てこない。普段から訓練していなかったら、いざというとき、激しく悩んだり落ち込んだり、失敗することになる。親しい者が生き返ってほしいと願うのは、輝く名月を取ってほしいとせがんで泣く子のようなものだと頭で理解しているだけでは危うい。
仏陀が発見した、「一切の現象は因縁によって生じる」という真理に基づいて訓練しよう。人は、闇雲に生きるべきではない。生きるうえで、私たちは日々問題に遭遇する。そのたびに「どうすればいい?」「どう対応すれば、この問題は解決する?」と自問自答する習慣を身につけよう。社会で起こるほとんどの問題は、この対応の仕方で解決する。答えを導き出す必要のある問題を乗り越えたら、楽しみと充実感が生まれる。答えがない問題に対しては、自然法則だと理解すれば、落ち着いて冷静にいられる。
「どうすればいい?」とは、人生で起こる問題に足を引っ張られることなく、穏やかに充実して生きるための呪文。この呪文は、日々使わないと効き目がない。理性と智慧に基づく生き方は、毎日着実に訓練する必要がある。いつでも智慧を使って、日常生活の中から無常を理解する。苦を理解する。現象は無我で、実体はないことを理解する。執着から生まれる悩み苦しみを理解する。執着がない心の清らかさを体験する。結果として、人生に起こる一切のトラブルに対して、正しい対応ができるようになるだろう。