【ブッダの神髄を伝える】

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2021/10/23 07:01


そもそも「人間関係がうまくいかない」とは、どういう状態のことか? そんな根本的なところから考えてみよう。

たとえば、どうしてもうまく付き合えない上司がいるとする。とにかく保守的で視野が狭く、物事のネガティブな側面ばかり見て、新しい挑戦には断固として反対する。そういう自分を賢いと勘違いしていて、何でも一番でないと気が済まず、頑固で、他人の意見に耳を傾けない。そんな上司がいるとしよう。なぜ、この上司とうまく付き合えないのか。「保守的で、視野が狭くて、頑固な上司となんて、うまくいくはずがない」。そう感じる人も多いだろう。しかし、それは違う。

「上司たるもの、保守的で、視野が狭くて、頑固ではいけない」と決めたのは誰だろう。他でもない、私自身だ。私が「上司とはこうあるべき」というフォーマット(理想の上司像)を勝手に作って、それにあてはまらない人を糾弾しているだけだ。よくよく考えてみれば、これまた自分勝手な話ではないだろうか。人とうまく付き合っていく能力、人間関係を構築する力とは、この「自分のフォーマット」をいかに外していくか、という能力にほかならない。

人間関係においてトラブルが生まれるのは、何が正しくて何が間違っているかを私が決定するから。上司が、お世辞・ごますりが大好きな人で、私はその種のことが大嫌いだとしても、職場環境を良くしたいなら、お世辞を言ったり、ごますりをしたりすればいいだけの話。「相手が悪い」「私は正しい」と犯人探しをしても、それで人間関係が悪くなるなら、まったく意味がない。「私は、ごますりなんかしないぞ」というのは、「そのコミュニケーションの仕方は正しくない」という自らのフォーマットにこだわっているから。

大事なのは、感情ではなく、理性を使って、周囲の状況をよく観察し、正確に把握すること。現在の状況に応じて、柔軟に対応していくこと。これに尽きる。相手の問題をとやかくあげつらうのではなく、自分のフォーマットを外して、柔軟に対応する力を身につけよう。お世辞・ごますりが好きな人には、どんどん言えばいい。ニコニコ挨拶していれば問題なく過ごせるなら、そうすればいい。上司が「褒めてほしい」と思っているなら、褒めてあげれば解決する話だ。

職場以外の人間関係も、基本的には同じ。親子・夫婦・友人・恋人との関係でも、とかく人は「こうあるべき」「こんな態度で接してほしい」「こんな言葉は使うべきでない」など、自分のフォーマットにこだわるあまり、いろんなトラブルを起こしてしまう。しかし、冷静に考えてみれば、「私が期待するように、相手に接してほしい」というのは、あまりに身勝手だろう。そんなスタンスでいれば、人間関係がこじれるのは当たり前。

逆に、人間関係をこじらせる人を観察すれば、「自分のフォーマットにこだわっている」姿が見えるはず。自分のフォーマットを手放せないために、周囲とすぐに衝突して苦しんでいる姿が見えてくるはずだ。人間関係を学ぶことの本質とは、すなわち、周囲の状況を観察して、自分の態度を柔軟に変えること。余計なフォーマットを思い切って捨てて、もっとシンプルに環境に適応することなのだ。


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